〜経営に活かす、生きたマネジメントシステムのご紹介〜
この度、マネジメントシステム経営研究会を再開する事と致しました。
私がISO9001やISO14001といったマネジメントシステム(以下、MS)の世界に入って早や20年になります。
その間、多くの企業様のコンサルティングを行い、また、QMS及びEMSの審査員として全国を回り、数多くの企業様の審査を担当して参りました。
その中で、多く聞くのが「自社のMSは見せられないが、他社がどのようにやっているのか興味がある」という声です。
MS経営研究会を再開するに当たり、私が20年間に渡り、審査の現場で見てきた様々な企業(匿名)の取組みや優れた事例、そしてコンサルタントとしてのMSの活用方法やそのノウハウを公開していきたいと思った事が再開理由です。
このHPでは、「審査員の視点(他社事例)」「コンサルタントの独り言」の2つのコーナーを設け、様々な事例や取組み方を少しずつ紹介していきたいと思います。不定期になりますが、是非、ご一読下さい。
※審査業務では”ご提案”は致しますが、コンサルティングは一切行っておりません。
株式会社渡辺コンサルティングオフィス
代表取締役 渡邉 晋久
桜美林大学認定マネジメントシステムコーディネーター
一般社団法人経営者育成協会 認定経営スペシャリスト
登録番号:19-A―0161
皆さんの会社のMSについて、以下のような状況に陥っていませんか?
管理責任者だけがISOをやっている。
社長を含め、誰も関心がない。
ISOは取るだけでいい。
お客さんから取れと言われたから
やっているだけ。
システムが重い。
何でこんなにやる事が多いのか?
ISOが仕事になってしまう。
審査活動やコンサルティングを通じて上のような声をよく聞きます。
しかし、本来のISO9001(品質MS)・ISO14001(環境MS)は、経営者の経営方針(経営戦略)に従い、如何に顧客の満足を高めるために製品及びサービスの品質改善と業務改善を重ね、より多くの顧客の支持を得て収益を高めていくか、つまり、MSの認証とは“信頼される企業の証”であり、“利益を合理的に、効率的に生み出すための経営システム”なのです。
多くの審査先で感じる事は経営者がMSを理解していないという事です。
管理責任者が独りでMSを回している。
つまり、企業にとってMSとは何か、という理解が欠落しているケースが非常に多いという事を感じます。
「再開!MS経営研究会」のHPでは、企業の収益向上に繋がるMS活用のヒントや他社事例(全て匿名)を満載予定。
企業の明日に繋がるMS活用法やノウハウを順次、公開して参ります。
尚、MS経営研究会では、皆様からのご質問やご要望、
さらには自社のPRを兼ねたMS活用事例発表なども掲載できます。
一緒にMS経営研究会を盛り上げませんか?
ISO9001:2015品質マネジメントシステムには、企業の売上を伸ばし、利益を守る“仕組み”が全て揃っています。
つまり、経営システムなのです。無いのは会計だけ!それではISO9001:2015の構造を見てみましょう。
この構造図は9001規格を図で示したものですが、一番上の左右は4.1及び4.2を示します。
尚、「事業計画」「今年度の目標」の部分は規格要求事項にはありません。
企業を取り巻く外部の状況は政治、経済、社会状況や最新技術(PEST分析)や競合他社の状況、脱プラスチックやフードロス等のマーケットの変化と環境問題への取組みなど、社会における企業としての在り方も重要な視点だと思います。
この状況の中で、当社はどうあるべきか、どこにビジネスチャンスがあるのかと言った経営者の視点が4.1及び4.2になります。
尚、購買先・仕入先が持つ課題も「外部の課題」です。
これら市場ニーズの把握に基づき組織の目的、理念や経営方針を明確にし、必要に応じて変化しくことも重要と考えます。
先ずは顧客重視。お客様の信頼を高めるには、我々は何をすれば良いのか?
これらの企業理念や方針に基づき、中長期の事業計画を立案する事になります。ある経営コンサルタントは、「本当の事業計画とは人材育成である」と言っています。モノはお金を出せば買えますが、数年後の我が社に必要な人材は自ら育て上げる他はありません。3年後、5年後に我が社はどうあるべきなのか、その時に必要な人材は?どのような経験(成功や失敗)と知識と資格が必要か、計画的な育成です。(7.2力量)
中長期の事業計画のうえで今年度の事業・経営計画になりますが、その達成のために各部門は何をすれば良いのか?方針と目標は整合性が取れていなければならない、これは規格要求事項です。各部門が示した目標達成における“リスクの抽出”が大切です。品質目標達成における不確かさを把握する必要があります。
但し、取るべきリスク=挑戦を忘れてはならないと思います。挑戦と変化ができる企業風土が大切です。
例:クレーム件数:年間〇〇件以下 社内不適合:年間〇〇件以下
リスク=私は、「損失発生の要素・要因」と説明しています。
クレーム件数や社内不適合件数を削減するに当たり、どのような不確かさ(リスク)があるのかを明確にする必要があります。構造図の中央にタートル分析図(4M分析)がありますが、クレーム件数、社内不適合件数の発生する原因をこの4Mに求め、その集計結果を統計的手法で分析する事を提案しています。
4M分析(人=力量、手順・標準化=品質維持・向上、材料=購買先の評価、設備・機械=メンテナンスと最新設備の導入検討)に基づき、クレームや社内不適合がどのような原因に基づき発生しているのか、リスクを分析する事が重要です。また、生産性や効率性を向上させるために重要管理点(KPI)を定め、その達成に向けた活動を定める事も重要です。客観的な事実に基づく経営判断です。
このクレーム(苦情)や社内不適合の削減は当然、会社の利益と直結しています。
直接費や間接費、変動費や固定費などに密接に関連する事象であり、これらを削減する事は“利益を守る活動”と言えます。
大切な事は、これらの削減は手段であって、本来の目的ではないという事です。本来の目的は利益を守る事です。審査では、必ずと言って良いほど「クレーム件数削減」「社内不適合件数削減」という品質目標を目にしますが、企業にとって重要な事は、これら負の部分を削減する事により、会社の利益をどう守るのか、という事だと考えます。つまり、件数が問題なのではなく、どのようなクレームや社内不適合を削減するのか、という中身の問題だと思います。
繰り返しますが、無駄なコスト削減が本来の目的であり、件数の削減が目的ではないという事です。無駄なコストが削減された結果、何が生まれるのか?これが“機会”です。生まれる機会=企業収益の向上
構造図の右下にデータ分析の例を挙げてあります。この中で「クレーム・ロス発生状況と要因分析」とありますが、タートル分析図との関連の中で我が社の無駄なコストは何処で、どのように発生しているのか客観的なデータに基づき判断する必要があります。
そして、優先順位を付けて是正処置や改善策を講じ、再発防止と予防処置を講じる事が大切です。
この図は4つのリスクを分類したものです。
さて、皆さんの事業の中で、上記に該当するリスク(損失発生の要因・要素)はどのようなものがあるでしょうか?
クレームや苦情、社内不適合は勿論の事、事故や災害によって発生する可能性のあるものはどのようなものがあるでしょうか?
ある企業は、上記4つの分類に基づき事例を挙げ、優先順位を付けて対策を取っています。企業にとって予防処置が最も重要な事は言うまでもありません。
MSとは予防処置である。
QMSで言う“品質”とは、経営戦略に他なりません。「我が社はこの製品・サービスを通じて社会に貢献します。」で言うところの“製品の品質”であり“サービスの品質”を指し、企業の戦略そのものです。
その品質が店舗毎にバラバラだったり、工場の製造ライン毎にバラバラであれば、統一した品質管理は不可能だし、多くの顧客(エンドユーザー)の支持は得られません。「あそこの店のタヌキそばは美味いが、同じチェーン店なのに、こちらの店のタヌキそばは不味い」というのでは店舗毎の品質のバラつきが大きく、多くの顧客の集客は無理です。企業が「この味で勝負する」と決めたら、どの企業も徹底した標準化、マニュアル化と使用する原材料や設備の管理、店舗のコンセプト、作業環境の統一を図っている筈です。
企業はどういう“品質”で勝負するのか、構造図にあるタートル分析図(4M分析)は、まさに品質管理のための業務改善ツールです。また、内部監査では、発生した不適合や苦情に対する不確かさ(リスク)を探すためのツールでもあります。
審査で様々な企業さんの“顧客満足度調査”を見てきましたが、その多くは現在の顧客満足を見ているだけで、明日の顧客満足を捉えていません。
しかも、項目は“品質”“価格”“納期”の3つが大半です。
中には“営業マンの対応”という項目で“良い”“普通”“悪い”といった在り来たりの質問をしている例がありますが、ニーズを探る内容では無いケースが大半でした。また、顧客コメント欄では「提案が無い」といった不満が出ているにも関わらず、企業として何ら対応をしていないケースが大半でした。
※提案が無いという事は、ただの御用聞きという事です。
ある大手企業ですが顧客不満足を調査しています。
満足など聞かない。「我が社に対する不満足」を一生懸命調べています。
そして、不満足な点に対して企業として誠心誠意を以て対応する事により、当初は不満だった点が改善され、非常に高い満足度に変わっていくというのです。
そうする事により、企業に対する信頼度が一層高まり、売上・利益に結びついていくと言います。
“不満足”を“満足”に変えるには、営業は勿論、設計・開発も、業務も、製造も、検査・出荷も!従来の仕事のやり方を変えていかなければなりません。
変化しなければならない。
新たな知識や技術、機械・装置を導入し、顧客の要求に応えていく。
そのためには社員一人ひとりが新たな挑戦を可能にする企業風土が必要です。
私が尊敬するローランドベルガー日本法人会長の遠藤功氏の「生きている会社、死んでいる会社」の一節をご紹介します。(187ページより)
※東洋経済新報社刊(2018年)
今回はここ迄です。
次回はSWOT分析等いくつかの分析手法の説明に加え、「審査員の視点」を幾つか書いてみたいと思います。
普段、審査員としての活動を通じて感じた事、規格要求事項で分かり難く、どの会社も誤解をしている事などといった事例を紹介したいと思います。皆様の何かヒントになれば幸いです。それではまた、次回。
株式会社渡辺コンサルティングオフィス
代表取締役渡邉 晋久(わたなべ ひろひさ)
住所:〒273-0105 千葉県鎌ケ谷市鎌ヶ谷2丁目3番89号
創業:平成18年5月10日
桜美林大学認定マネジメントシステムコーディネーター
一般社団法人経営者育成協会 認定経営スペシャリスト
登録番号:19-A-0161
コンサルティング実績:平成26年以降32社
(ISO9001、14001,27001,45001)
※平成18年以前の個人事業主としてコンサルティングを行っていた頃の件数やその後、某企業に就職し、ISO事業部長として活動していた当時の件数は除く。
某認証審査機関の契約審査員(登録日:2001年2月27日)
品質マネジメントシステム:主任審査員
環境マネジメントシステム:主任審査員
HACCP :審査員
審査実績:2021年1月~12月(39件)